大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和27年(う)260号 判決

被告人 深美フサ

弁護人の控訴趣意第一点について。

原判決挙示の証拠、殊に、Yに対する原審証人尋問調書の記載によれば、原判示の事実、すなわち、被告人が其の経営する料亭に、接客婦として抱え入れたY(昭和九年七月二十五日生)の年齢について、これを確知すべき何等適当なる方法を講ぜざるまま、漫然、同女が既に満十八歳に達したるものとの臆測の下に、昭和二十六年六月二十三日から同年九月二十三日頃迄の間、前後七回に亘り、何れも肩書住居に於て、同女をして西野信一外六名に対しそれぞれ原判示の如き淫行をなさしめたものであることを肯認するに十分である。弁護人は、「右Yは被告人に対し、氏名年齢を詐称し、自己の姉よし子(昭和七年九月二十七日生)の氏名、生年月日を自己の氏名、生年月日として告知していたものであり、斯る場合、たとえ被告人に於て、原審指摘の如く、同女の戸籍謄本其の他身分関係を明にすべき書類の取寄せ手続を履践したとしても、斯様な方法によつては、到底同女の真実の氏名年齢を知ることが出来なかつたものであつて、若し斯の如き事態の下に、あくまでも同女の身元を確知しようと欲するならば、その出生地(徳島県)まで出向き、親しく実地について真相を調査するの外なく、しかるに、斯の如き方法を採ることは、経費の関係上不可能であり、結局、被告人がYの年齢を知らなかつたことは、社会通念上の不可抗力に基くものであつて、同人の過失によるものではない。」と主張するけれども、しかしながら、料亭の経営者が、抱え入れようとする接客婦の身元を調査するに際しては、単に、戸籍謄本其の他同女の身分関係を証明すべき各種の書類の取寄せをなすを以つて足れりとするものでなく、或は親元、親族等に照会を発し、若し不審の点があるときは、官憲の協力を求める等、其の身元を、確知するため万全の措置を講ずべきものであることは謂うまでもなく、然るに、前記Y証人の供述に被告人に対する検察官作成に係る供述調書の記載を綜合すれば、被告人は斯る方法を講ずることなく、Yの言のみに措信して同女を接客婦として傭入れ、しかも、其の後昭和二十六年六月上旬頃同女に対し、飯米通帳の提出方を要求した際同女より、「自分はYでなく、その妹であつて、さきに告げた生年月日は偽りであり、右の次第で、Y名義の飯米通帳を提出することが出来ない。」旨告げられ、従つて、同女の出生地に就いて実地を調査するまでもなく、戸籍謄本の取寄等の手続のみによつても容易に同女の身元を明確にし得る状態にあつたにも拘らず、叙上の如き各種の適切なる方法を講じて右Yの年齢を確知することを怠り、同年六月二十三日より同年九月二十三日頃に至る迄、同女をして、自己の経営する料亭に於て接客婦として稼働せしめ、其の間前後七回に亘り、嫖客に対し原判示の通り淫行を為さしめたものであることを認定するに足る。そうして見れば、原判決は事実を誤認したものでなく、理由に不備の存するものでないから、論旨は理由がない。

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